心臓の病気として多くの人が患う「狭心症」について説明いたします。今回は狭心症の「まとめ」です。ここを読めばかなり理解が深まると思います。
私は10年以上循環器専門医として診療を行なっています。
資格としては、
「循環器専門医」:心臓全般の専門的知識を有する医師
「心血管インターベンション治療学会専門医」:心臓や血管のカテーテル治療を専門的に行える医師
などの心臓や血管の病気を治療するエキスパートとしても働いております。
インターネットには「狭心症」に対する数多くのホームページがありますが、私の経験から患者さんが疑問に思う点などを踏まえながら、患者さん目線に立って説明していきたいと思います。
症状や原因
・胸痛は急ぎ足、昇段、重いものを持つ、運ぶなどの労作時(ろうさじ)に症状がよく起こる。
・ニトロペンやミオコールスプレーと呼ばれるニトログリセリン製剤を飲んで1〜5分で改善する場合は狭心症である可能性が高い。
・刺されるよう な痛みやチクチクする痛み、触って痛む場合は狭心痛ではないことが多い。
・多くの場合、動脈硬化によって冠動脈が狭くなることにより生じますが、動脈硬化を促進する因子としては、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、喫煙が最も大きなリスクファクターである。
👇症状や原因の詳細についてはこの記事を参照ください。
検査について
①まずはクリニックを受診。問診や簡単な検査などから「高度な検査」が必要であれば専門施設へ紹介してもらう。
②専門施設では、「心臓CT」と「心筋シンチ」がスタンダード。FFR-CTや心臓MRIは施設の状況に応じて検査してもらう。
👇検査の流れの詳細についてはこの記事を参照ください。
薬物治療について
まずは薬物治療を開始する。
しかし、お薬を4~8週間継続しても症状が持続する、改善しない場合は、担当医師とよく相談しカテーテル検査や治療をするかどうか決定する。
まれなLMCA病変まれなLMCA病変以外は、基本的には薬物治療を最初に開始します。ここは非常に重要です。
*LMCA病変というのは左主管部病変という意味で、心臓の中で最も重要なところに狭窄があるということを表しています。LMCA病変が疑われる場合は、すぐに入院でカテーテル検査が望ましいです。
カテーテル治療は、薬を試した後に検討するという流れです。
循環器学会ガイドラインより
👇薬物治療の詳細についてはこの記事を参照ください。薬の個々の説明もしています。
カテーテル検査および治療について
・カテーテル治療は基本的に入院。治療前日に入院し担当医から説明と同意書のサインが必要。
・検査前より点滴が開始。治療が必要な場合は、抗血栓薬を内服する。
・カテーテル検査や治療は基本的に局所麻酔。患者さんは意識がある。
・カテーテル挿入部位は、橈骨動脈(手首の動脈)あるいは大腿動脈(鼠径部の動脈)のどちらかになる。
・カテーテルを使って、狭窄部位にステントを留置する。薬剤溶出性ステントが主流。ステントは留置したら取り除くことは不可能で一生留置したままとなる。
・治療後は、翌日あるいは翌々日に退院となる。病気が複数箇所ある場合は入院が長引く場合もありうる。
👇カテーテル治療の詳細についてはこの記事を参照ください。
予防について
高血圧:若年の患者で は血圧130/80 mmHg未満、高齢の患者では血圧140/90 mmHg 以下
糖尿病:合併症予防の観点よりHbA1c 7.0%未満。糖尿病に関しては下げすぎは必ずしもいいとは限らない。低血糖のリスクが上がるため。
脂質異常症:LDLコレステロールが大事。LDLコレステロールは低ければ低いほどよい。LDL-C 70 mg/dL未満を目標。すくなくとも100 mg/dLは目指さないといけない。
喫煙:禁煙あるのみ
👇予防の詳細についてはこの記事を参照ください。
狭心症になったときに治療をお勧めできる病院の見分け方
・心筋シンチやFFR-CTの設備がある(単なる心臓CTだけではダメ)
・医師の数が多い
・カテーテル治療の総数に対する「緊急」の割合が高い
👇病院の選び方の詳細についてはこの記事を参照ください。
まとめ
医師向けのサイトや文献解説にはこれらの内容を書いた記事や論文が見受けられますが、患者さんにはチンプンカンプンだと思います。
患者さん向けに解説した、これらのポイントはあまりサイトには載っていません。
私の意見が100%正しいわけではありませんが、皆さんがよりよい治療を主体的に受けていただくためにお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(参考)
冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2013_ogawah_h.pdf
慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_yamagishi_tamaki.pdf
2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Nakano.pdf
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