今回は心臓の病気として多くの人が患う「狭心症」について説明いたします。
私は10年以上循環器専門医として診療を行なっています。
資格としては、
「循環器専門医」:心臓全般の専門的知識を有する医師
「心血管インターベンション治療学会専門医」:心臓や血管のカテーテル治療を専門的に行える医師
などの心臓や血管の病気を治療するエキスパートとしても働いております。
インターネットには「狭心症」に対する数多くのホームページがありますが、私の経験から患者さんが疑問に思う点などを踏まえながら、患者さん目線に立って説明していきたいと思います。
👇狭心症のまとめ記事です。こちらを読めば大体わかるようになっています。ぜひ参考にしていただければ幸いです。
「狭心症とは?」
狭心症は大きく分けて2種類あります。
労作性狭心症(動脈硬化による狭心症)
「ろうさせいきょうしんしょう」と読みます。「動脈硬化」と呼ばれる「血管の老化」が原因となります。
上の図のように、心臓の周りについている動脈を「冠動脈」と言いますが、この動脈が動脈硬化を起こすことで「労作性狭心症」を発症します。「冠動脈」が心臓の筋肉に酸素や栄養を供給することで、心臓は身体中に血液を送り出すことができます。
動脈硬化を起こすとは、上の図のように「動脈の中にプラークと呼ばれる脂肪の塊のようなものができてしまい、血液の流れを妨げること」を言います。
心臓に栄養や酸素を送っている「冠動脈」が動脈硬化を起こすと、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養を送ることができなくなり、「狭心症」を発症します。
冠攣縮性狭心症(冠動脈の痙攣による狭心症)
「かんれんしゅくせいきょうしんしょう」と呼びます。「異型狭心症」あるいは「スパズム」とも呼んでいます。冠動脈が痙攣することが原因です。
上の図の真ん中のように、冠動脈には動脈硬化による狭窄がないのにもかかわらず「攣縮(れんしゅく:けいれんして縮まること)」を起こすことで動脈硬化による狭窄と同じ様に、血流を妨げてしまうことで狭心症を発症します。
「狭心症の症状とは?」
胸の圧迫感や締め付け感、痛みが生じます。肩や左腕、のど、歯へも広がることがあります。
胸の痛みは、「ここが痛いです!」などと指で指し示すことができる痛みではなく、全体的に胸が重苦しというような痛みや締め付け感になります。「ここが痛いです!」といって指で指し示すことができる痛みは筋肉とか神経、骨などの痛みが多いです。
刺されるような痛みやチクチクする痛み、触って痛む場合は狭心痛ではないことが多いです。
どういうときに起こりやすいか?
胸痛は急ぎ足、昇段、重いものを持つ、運ぶなどの労作時(ろうさじ)に症状がよく起こります。労作性狭心症といわれる所以です。
すこし立ち止まって休んだり、安静にすると数分で改善します。
とくに、ニトロペンやミオコールスプレーと呼ばれるニトログリセリン製剤を飲んで1〜5分で改善する場合は狭心症である可能性が高いです。
また、怒ったり精神的に興奮したり、食事などでも起こることがあります。
また、早朝は胸痛の閾値が低くいとされ、発作が出現しやすい状態です。
胸痛の持続時間
胸痛の持続時間は数分程度が多く、長くても15~20分です。
胸痛の持続が20 秒以下のときは狭心痛の可能性は低いとされます。
20 分以上持続する場合、心筋梗塞になっている可能性は否定できません。
ひどくなると上の写真のような痛みや締め付け感があります。
歯に痛みを感じ歯医者さんに先に行かれることがあります。
「歯が痛いので歯医者に行っても、全然大丈夫と言われ、歯のお掃除だけして様子をみてました。だけど、全然良くならないのでネットで調べて心臓じゃないかとおもってきました。」
と外来受診される患者さんもいます。
また、労作性狭心症では歩行や階段などの労作によって症状が生じ安静にすると治まります。食後や寒冷時などに増悪することがあります。
高齢の方や糖尿病のある方では、典型的な胸の症状がはっきりしないことがあります。
高齢者は、典型的な胸の痛みではなく、「なんとなくしんどい」とか「息が切れる」などと狭心症の症状とは明確に言えない症状を訴えることがありますので見逃される可能性もあります。
また、糖尿病の持病のある患者さんですと、心臓の痛みに対して鈍感になっており、かなり進行するまで症状がわからないケースも少なくありません。糖尿病の患者さんは狭心症にもなりやすいですし要注意です。
不安定狭心症
症状の回数が増える、安静時にも症状が生じるなどの場合は「不安定狭心症」と呼ばれます。冠動脈がほぼ詰まりかけてる状態です。
心筋梗塞に移行する可能性が高くなっていると考えられており、緊急に治療する必要があります。
冠攣縮性狭心症
労作性狭心症とは違って、安静にしている時に狭心症の症状を起こします。
とくに夜中や明け方など就寝中に起こることが多いとされます。
狭心症の原因
多くの場合、動脈硬化によって冠動脈が狭くなることにより生じますが、動脈硬化を促進する因子としては、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、喫煙などが知られています。
じゃあ、どれくらいの確率で発症するの?
という疑問が出てきます。
国立循環器病研究センターの研究により、心筋梗塞など冠動脈疾患の10年間の発症危険度を予測する新しいリスクスコアを開発されました。以下の表で自分自身の得点を出すことにより、どれくらい狭心症や心筋梗塞を発症しやすいか確率でわかります。CKDとは慢性腎臓病のことで、目安としては、男性で血清クレアチニン値が1.3以上、女性で1.0以上だとCKDと予想されます。細かい健康診断だといずれもこれらの値が数値で出てくると思います。
例えば、「60歳男性、喫煙あり、糖尿病あり、血圧は正常血圧、LDLコレステロールは140、HDLコレステロールは33、CKD(慢性腎臓病)なし」だとすると、
60歳男性で45点、喫煙ありで5点、糖尿病ありで6点、正常血圧で0点、LDLコレステロール140で7点、HDLコレステロール33で0点、CKDなしで0点なので、合計すると63点なので「10年間で狭心症や心筋梗塞を発症する可能性は14%」となります。
14%って低いよね?って思われるかもしれませんが、めちゃくちゃ高いです。10人に1〜2人が10年間で手術が必要なほどの狭心症や心筋梗塞になるのですから。健診が終わったら計算してみてください。
冠攣縮性狭心症の原因
冠攣縮性狭心症の原因として、喫煙、飲酒、脂質異常症、ストレスなどがあり、動脈硬化との関連性も示唆されています。
その中でも1番の原因は
喫煙
です。
喫煙は肺癌などの原因にもなりますし、税金のかたまりだし、臭いし何もいいことがありません。今日からやめましょう!
まとめ
今回は狭心症の種類、症状や原因について説明しました。
狭心症は「胸が苦しい」などの症状が出現し日常生活に支障を及ぼします。
それだけでなく、心筋梗塞へ発展する可能性もあります。心筋梗塞になると命の危険性があります。
次回は、狭心症の「検査」「治療」「予防」について説明します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
👇次は「狭心症の検査について」です。ぜひ参考にしてください。
(参考)
冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2013_ogawah_h.pdf
慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_yamagishi_tamaki.pdf
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