フォシーガ:オススメできるお薬をご紹介

今回は、糖尿病のお薬でも知られる「フォシーガ」についてエビデンスや有名論文に基づいた内容をご説明いたします。
糖尿病の治療薬である「フォシーガ」ですが、糖尿病だけではなく心臓や腎臓にも効果があることが最近証明されました
結東貴子さん
「フォシーガ」っていったいどういう薬なの?
ぽりぽり
当初、糖尿病治療薬として販売されましたが、糖尿病だけでなく心臓や腎臓にも良い作用があることがわかってきたお薬です。
結東貴子さん
詳しく知りたいわ
ぽりぽり
わかりました。フォシーガの効果や効果がある疾患について詳しく見てみましょう。
フォシーガをまとめると以下のようになります。
フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)
・SGLT2阻害薬というタイプの糖尿病治療薬の一つ。
・心不全に対して効果がある。
・腎不全に対して効果がある。
・ダイエットに使用されることがある←オススメしません
この記事を読んでほしい人
✅ ご自身やご家族に糖尿病がある人
✅ ご自身やご家族に心臓の病気がある人
✅ ご自身やご家族に腎臓の病気がある人
✅ 健康に不安がある人
✅ 新しいお薬に興味がある人
それでは、フォシーガを詳しくみていきましょう。
目次

フォシーガの形状

5mg錠と10mg錠の2種類あります。

5mg錠
10mg錠

フォシーガの効果

フォシーガはSGLT2阻害薬という種類のお薬になります。
SGLT2阻害薬とは、尿中に糖分を排泄することにより血糖値を下げる作用があります
つまりは、口から摂取した糖分を尿に混ぜて捨てるというお薬です。
結果として、尿から糖が出ていくので、血液中の糖分が低下する(=血糖値が下がる)という効果があります
SGLT2というのは、腎臓に存在し、尿に混ざった糖分を吸収する仕組みのことを言います。この仕組みのおかげで、糖分が尿と一緒に排出されてしまうのを予防します。
しかし、尿に混ざった糖分が多すぎると、SGLT2ではすべて吸収するのが困難となり尿に糖が混ざったまま排出されます。これが糖尿の原因です
このSGLT2を逆手に取ってお薬にしたのがSGLT2阻害薬です。
SGLT2阻害薬は、SGLT2を阻害(=邪魔)することで、尿に混ざった糖分の吸収を妨げ、わざと尿と一緒に糖分を排出させます。これにより、糖分がどんどん尿と一緒に排出されるので、血液中の糖分、すなわち血糖値が低下するのです。
その効果のために糖尿病治療薬として2014年にアストラゼネカ社と小野薬品から販売されました。
糖尿病のお薬として処方されていたのですが、お薬を服用されていた患者さんに心不全がよくなったり、慢性腎臓病がよくなったりする傾向がわかってきました。
心不全については、こちらの記事を参考ください。
あわせて読みたい
【専門医がわかりやすく解説】心不全の症状、原因、治療について 循環器専門医(心臓専門医)がわかりやすく説明します。 今後、「パンデミック」と呼ばれるほど心不全を患う患者さんの増加が予想されています。ご自身、ご家族やご友人...
慢性腎臓病とは?
・慢性腎臓病とは、腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下するか、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を言います。 *腎臓の働きについては、採血検査で容易に推定することができます。
高血圧、糖尿病、肥満やメタボリックシンドローム、腎臓病、家族に腎臓病の人がいる場合は進行しやすいので要注意です。
・さらに慢性腎臓病は、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の重大な危険因子になっています。
(日本腎臓学会編「CKD診療ガイド」2007より)

フォシーガは心不全に有効

フォシーガは、心不全の悪化を有意に低下させた初めてのSGLT2阻害剤です(1)
フォシーガを服用していない人たちと比較して、約26%もリスクを低下させることができたと報告されて非常に話題になりました。
2019年にこの結果がパリで開催された欧州心臓病学会(ESC 2019)で発表されました。欧州心臓病学会は世界で一番大きな医療従事者の会議の一つと思っていただければよいです。
実は、私もこの会場に参加していたのですが、その結果が発表された瞬間、満員の会場からスタンディングオベーションの嵐でした。
その記念写真です。会場は満員で部屋に入りきれないほど聴衆が多かったです。
心不全は、いろいろな薬を使って治療しますが既存の薬では効果が乏しい患者さんが少なからずいます
長らく、効果的な心不全治療薬が出現してこなかったのですが、フォシーガが心不全に効果的との発表は心不全に苦しむ人々の福音になるだけではなく、医師にとっても心不全に対する大きな武器を手に入れたことになるため、大きく歓迎される結果となりました。
結果として、糖尿病がない心不全患者さんに対してもフォシーガを処方していくことができるようになりました
私も適切な患者さんがいれば、積極的に使用しています。
(1)DAPA-HF  N Engl J Med. 2019; 381: 1995-2008.

フォシーガは慢性腎臓病にも有効

フォシーガは、慢性腎臓病の患者さんの腎機能の悪化、死亡のリスクを有意に低下させたSGLT2阻害薬です(2)
フォシーガを服用していない患者さんと比較して、約39%もリスクを低下させました 。
また、フォシーガは、全死亡のリスクを31%も低下させました。
なんと、慢性腎臓病には有効な薬はあまり見つかっていませんでした。しかし、2021年、フォシーガが慢性腎臓病に有効だという報告結果を受け、慢性腎臓病に対して有効とする薬剤として国内初の承認を取得しました
慢性腎臓病の国内患者数は1,300万人に上ると推定されていますが、治療の選択肢があまりなかったため、今回の承認は日本の多くの慢性腎臓病患者さんにとって大きな希望になると考えられています。
糖尿病の有無にかかわらず慢性腎臓病の患者さんに対して治療薬が生まれたことは非常に画期的なことです。
慢性腎臓病は進行すると人工透析や腎移植が必要になるほか、脳卒中や脳梗塞で死亡するリスクが高まりますので、慢性腎臓病の患者さんには積極的に使っていきたい薬の一つとなりました。
(2)DAPA-CKD N Engl J Med. 2020; 383: 1436-1446.

フォシーガが処方される疾患

フォシーガは、糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病の治療薬になります。
・2型糖尿病
・1型糖尿病
・慢性心不全 *ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
・慢性腎臓病 *ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

 

フォシーガの用量用法

フォシーガの用量用法(=使い方)は病気の種類によって異なります。

2型糖尿病

通常、成人には5mgを1日1回経口投与する。
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。

1型糖尿病

1型糖尿病治療では通常、インスリン製剤と併用します。
インスリン製剤との併用において、通常、成人には5mgを1日1回経口投与する。
なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。
フォシーガ(ダパグリフロジン)はインスリン製剤の代替薬ではありません
インスリン製剤の投与を中止すると急激な高血糖やケトアシドーシスなどの重篤な副作用を引き起こす可能性があります
フォシーガはインスリン製剤を中止せずに併用します。
また、インスリン製剤との併用時には低血糖のリスクがあります。
そのため、インスリン製剤の減量を検討する必要があります。

心不全

慢性心不全治療では通常、成人には1日1回10mgを経口投与します。
1型糖尿病を合併する場合は、適切な対応が行える管理下で1日1回5mgから投与します。
さらに、経過を観察しながらインスリン量を調整した後、1日1回10mgに増量します。
なお、1日1回5mgの投与では、慢性心不全に対する有効性は確認されていません。

慢性腎臓病

慢性腎臓病治療では通常、成人には1日1回10mgを経口投与します。
1型糖尿病を合併する場合は、適切な対応が行える管理下で1日1回5mgから投与します。
さらに、経過を観察しながらインスリン量を調整した後、1日1回10mgに増量します。
1日1回5mgの投与では、慢性腎蔵病に対する有効性は確認されていません。

フォシーガの副作用

どんな副作用があるのかあらかじめ知っておくことは重要です。
早期発見、早期治療につながります。
なお、以下の副作用はすべてを記載したものではありません。下記以外でも気になる症状が出た場合は、医師または薬剤師に相談してください。

主な副作用

主な副作用として、頻尿、口渇、性器感染、尿路感染、尿量増加などが報告されています。
上記の症状の中でも、特に女性の性器感染症や尿路感染症のリスクが高くなっています
尿路感染症とは?
尿路に細菌が感染することで排尿時に痛みやかゆみを感じたり、血尿が出たりします。
フォシーガは糖を尿に混ぜて排出するため、細菌感染を起こしやすいといわれます。
尿路感染予防には、お薬と一緒に水を多めに飲むことが推奨されています
症状がみられた場合は、副作用の可能性があります。
その場合は、早めに医師に相談しましょう。

重篤な副作用

重篤な副作用として、低血糖、脱水、脱水に伴う脳梗塞、ケトアシドーシス、フルニエ壊疽などがあります。
以下の人には注意が必要です。
低血糖:食事をうまく取れない人(栄養状態不良の人)、飢餓状態の人、過度のアルコール中毒の人、激しい筋肉運動を行う人が起こしやすい
脱水:血糖値が極めて不良な人、高齢者、利尿剤を併用している人
フルニエ壊疽:フォシーガ内服後に性器やその周辺に発赤・腫脹・圧痛を訴え、発熱等を認める人。
フルニエ壊疽とは?
菌に感染することで正規やその周辺の皮膚が壊死する病気。致命的になりうる
フォシーガによるフルニエ壊死は報告はされているが非常にまれである。
ケトアシドーシス:1型糖尿病を合併する慢性心不全患者及び慢性腎臓病患者さん。
ケトアシドーシスとは?
糖尿病患者において、喉の乾き、多尿、全身の倦怠感などの症状に引き続いて急激に発症する。
その後、悪化すると呼吸困難や吐き気、嘔吐、腹痛、意識障害などが起こる重篤な状態になる。

 

特定の背景を有する患者に関する注意

妊婦は内服できるのか?

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与できません。
糖尿病を患っている妊婦さんはインスリン製剤などを使用することが推奨されています。
妊娠中の投与に関する安全性は確立されていません。

授乳中に内服できるのか?

授乳しないことが望ましいです。
ラットで薬の成分が母乳へ移行しているのが報告されています。

高齢者

脱水症状を起こすことがあるため、ご自身で飲水できないような高齢の患者さんにはオススメできません。

フォシーガにジェネリック薬品はあるか?

フォシーガのジェネリック薬は現時点(2022年6月)ではまだありません。

フォシーガにダイエット効果はあるか?

京育浜子さん
フォシーガがダイエットに有効って聞いたことがあるけど?
ぽりぽり

(え?浜子さん?)

フォシーガがダイエットに有効であることは事実です。
しかし、まったくお勧めはしません。
京育浜子さん
なんでダメなの?
ぽりぽり
では、なぜダメか説明しますね。
もともとは糖尿病などの病気のために開発された薬です。
しかし、先にも説明しましたように、フォシーガは、本来であれば吸収されるはずの糖を尿として排泄する効果があります。
そのため血液中の糖(血糖)を減らし、体重減少につながります。
結果的に糖を減らすので実質的には糖質制限ダイエットと同じ状態です。
京育浜子さん
薬で糖質制限ダイエットできるなんていいじゃない?
ぽりぽり
薬は副作用があります。もしダイエットのために内服していて重篤な副作用が出ても何の補償もされませんよ。
フォシーガはあくまでも糖尿病、心不全、慢性腎臓病にのみ適応があるお薬です。
ですから、ダイエット目的で薬を飲む場合、保険診療ではなく自費での診療となりお薬代がかかります
また、副作用も無視できません。重篤な副作用が起こった場合、ダイエット目的であれば補償はされないと思ってください。
しかも、薬を飲み続けないとすぐにリバウンドしてしまいますし、飲み続けると体重減少効果は減弱するといわれています。
インターネットで「フォシーガ ダイエット」で検索すると、
「メディカルダイエット」などと題したサイトが多数見られますが、医師としてはオススメできません

まとめ

✅ SGLT2阻害薬の1つであり、糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病の治療薬である
✅ フォシーガの用法や用量は疾患別に異なる
✅ フォシーガの副作用では特に女性の尿路感染症や性器感染症のリスクが高い
✅ フォシーガを服用の際には病気や症状に応じた禁止事項や注意事項がある
フォシーガは糖尿病治療薬として開発されたお薬ですが、心不全や慢性腎臓病に効果を認められた初めてのSGLT2阻害薬です。
適切な患者さんに適切に使用すれば、有望な効果が期待できます。
ただ、ダイエットに使用するなど不適切な使用はさまざまな副作用の懸念もありお勧めできませんのでご注意ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

総合内科専門医と循環器専門医資格をもつ精神科医の備忘録です。
①医療のこと(循環器、精神科領域中心)
②子供の受験のこと(小学6年生 浜学園 公文)
③投資のこと(米国中心の投資について)
④時短家電のこと
⑤論文のこと(論文の読み方、書き方など)

コメント

コメントする

目次